イソシアネート基含有率(NCO%)の測定原理と手順|逆滴定による測定法を解説
イソシアネート基含有率(NCO%)とは
イソシアネートは、イソシアネート基(-N=C=O)を持つ化合物の総称であり、ポリウレタンの原料として広く利用されています。ポリウレタンの合成は、分子内に複数の水酸基を持つポリオールとイソシアネートが反応し、ウレタン結合(-NH-COO-)を形成することによります。
R-NCO + R'-OH → R-NH-COO-R'
水酸基とイソシアネート基は1:1のモル比で反応します。このイソシアネート基と水酸基の比率は、ポリウレタンの強度・耐熱性などの性能を左右するため、イソシアネート基の割合を正確に測定・管理する必要があります。
この目的で用いられるのがイソシアネート基含有率(NCO%)であり、原料中のイソシアネート基の質量パーセント濃度で表されます。
計算例:ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)
純粋なMDIのイソシアネート基含有率は以下のように計算されます。
NCO% = (NCO基のモル質量 × 2) / MDIのモル質量 × 100
= (42.02 × 2) / 250.25 × 100
≒ 33.6%
測定原理
イソシアネート基含有率の測定方法は、以下の規格で規定されています。
- JIS K 1603-1(第1部 イソシアネート基含有率の求め方)
- JIS K 7301(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)
測定は以下の3段階で行います。
① イソシアネートとジ-n-ブチルアミンの反応
過剰量のジ-n-ブチルアミン((C4H9)2NH)をイソシアネート(R-NCO)と反応させます。
R-NCO + (C4H9)2NH → R-NH-CO-N(C4H9)2
この反応は、脱水処理したトルエン中などの非水条件で行います。イソシアネートは水と反応しやすく、水が混入すると以下の副反応が起こるためです。
R-NCO + H2O → R-NHCOOH → R-NH2 + CO2
水との副反応はマイナスの誤差の原因となるため、水分の混入を防止する必要があります。
② 未反応のジ-n-ブチルアミンを塩酸で逆滴定
イソシアネートと反応せずに残った過剰のジ-n-ブチルアミンを、塩酸標準溶液で滴定します。
(C4H9)2NH + HCl → (C4H9)2NH2Cl
③ 空試験との差からNCO%を算出
試料測定と同じ条件で空試験(ブランク)を行い、空試験と試料測定の滴定量の差からイソシアネート基含有率を算出します。
NCO% = (V0 - V1) × c × 42.02 × 0.1 / m
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| V0 | 空試験の滴定量(mL) |
| V1 | 試料測定の滴定量(mL) |
| c | 塩酸標準溶液の濃度(mol/L) |
| 42.02 | 1mol/L 塩酸1mLに相当するNCO基のmg数 |
| 0.1 | 測定結果の単位を%に換算する係数 |
| m | 試料の採取量(g) |
使用電極
本測定は非水溶媒中での滴定であるため、以下の電極構成が推奨されます。
| 電極 | 種類・仕様 |
|---|---|
| 指示電極 | ガラス電極 |
| 比較電極 | 銀-塩化銀電極(ダブルジャンクション型) |
| 比較電極内部液 | 1 mol/L 塩化リチウムエタノール溶液 |
測定手順
- 1 mol/L ジ-n-ブチルアミン(トルエン溶液)25 mL をよう素フラスコに採取します。
- 脱水処理したトルエン 10 mL でフラスコ壁面をすすぎます。
- 試料をフラスコに加えて密栓し、質量を測定します。
- 完全に溶解した後、室温で 15 分間反応させます。
- フラスコの内容物を滴定用ビーカーに移し、アセトン 25 mL ですすぎます。
- 1 mol/L 塩酸水溶液で滴定します。
- 別途、空試験を同条件で実施します。
測定のポイント
水の混入防止
イソシアネートは水と反応するため、水の混入はマイナスの誤差を生じます。反応溶媒(トルエン)およびジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液は、タイプ4Aのモレキュラーシーブなどで脱水処理したものを使用してください。使用する器具類の乾燥も重要です。
試料の採取
試料が結晶化している場合は、均一に溶解するよう慎重に加熱します。その後、注射器(シリンジ)などを用いて採取することで、大気中の水分との接触を最小限に抑えられます。
反応熱がある場合
試料とジ-n-ブチルアミンの反応によって溶液が発熱する場合は、反応終了後、室温に戻るまで 5〜10 分間放置します。温度変化が電位応答に影響するためです。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 測定対象 | イソシアネート基含有率(NCO%) |
| 測定原理 | ジ-n-ブチルアミンとの反応 → 過剰アミンを塩酸で逆滴定 |
| 反応溶媒 | 脱水トルエン(非水条件) |
| 指示電極 | ガラス電極 |
| 比較電極 | 銀-塩化銀電極(ダブルジャンクション型) |
| 主な注意点 | 水分混入防止、試料の均一溶解、反応熱への対応 |
| 主な採用規格 | JIS K 1603-1、JIS K 7301 |