化学分析の実践ノウハウ

電位差滴定による界面活性剤の測定方法|手動滴定との違い・電極選定・トラブル対策

yusuke

界面活性剤は、医薬品、工業製品、シャンプーや食器用洗剤などの日用品に広く使用されています。
本記事では、電位差滴定による界面活性剤の定量方法について、手動滴定(エプトン法)との違い、使用する電極や滴定液、測定上の注意点、トラブル対策まで実務目線で解説します。


❶ 界面活性剤の種類

界面活性剤は、親水基の解離状態によって主に以下の4種類に分類されます。

  • 陽イオン性(カチオン)界面活性剤
     水に溶けたとき、親水基が解離してプラスに帯電する
  • 陰イオン性(アニオン)界面活性剤
     水に溶けたとき、親水基が解離してマイナスに帯電する
  • 両性界面活性剤
     pH によって、親水基がプラスまたはマイナスに帯電する
  • 非イオン性(ノニオン)界面活性剤
     水に溶けても解離せず、イオン性をもたない

本記事では、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤に絞って解説します。

その他の界面活性剤については、
「両性界面活性剤の測定方法【電位差滴定】」

「非イオン性界面活性剤の測定【電位差滴定】」
にて、詳しく解説しています。


❷ 手動滴定(エプトン法)と電位差滴定の比較

手動滴定(エプトン法)

  • クロロホルムを使用(環境・人体への有害性あり)
  • 終点判断は目視 → 個人差が生じやすい
  • 測定に時間を要する

電位差滴定

  • クロロホルム不要
  • 短時間で測定可能
  • 滴定曲線の変曲点を終点として自動検出 → 個人差が生じない

➡ 安全性・測定精度・作業効率の面で、電位差滴定のメリットが大きいと言えます。


❸ 使用する電極

指示電極

  • イオン性界面活性剤に応答するイオン選択性電極(界面活性剤電極)

比較電極

  • 可動スリーブ型比較電極

内部液

  • 3.3 mol/L 塩化カリウム水溶液

滴定の進行により沈殿が生じるため、可動スリーブ型比較電極の使用が推奨されます。
比較電極の詳しい取り扱いについては、以下の記事で解説しています。

比較電極(参照電極)の種類・保管・洗浄・内部液交換まで|正しいメンテナンス方法まとめ

※ 指示電極と比較電極が一体となった複合電極も使用可能です。


❹ 使用する滴定液

測定対象とは反対の電荷をもつ滴定液を使用します。

陽イオン性界面活性剤を測定する場合

(=陰イオン性の滴定液を使用)

  • ラウリル硫酸ナトリウム
  • ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
  • テトラフェニルホウ酸ナトリウム

陰イオン性界面活性剤を測定する場合

(=陽イオン性の滴定液を使用)

  • 塩化ベンゼトニウム標準溶液(ハイアミン)
  • 塩化テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム(ゼフィラミン)

滴定液の濃度は、試料濃度に応じて設定します。
一般的には 0.01~0.004 mol/L 程度が用いられます。
日本薬局方などの規格に従う場合は、規格指定の滴定液を使用してください。


❺ 滴定装置の設定

滴定スピードの設定

多くの滴定装置では ΔmV/ΔmL に応じて自動的にスピードが変化する設定がデフォルトです。
しかし安定した結果を得るには、一定量を間欠的に注入する設定がおすすめです。

  • 注入量:0.05~0.1 mL
  • 注入間の待ち時間:5~10 秒

終点検出の設定

  • 滴定反応の当量点 = 滴定曲線の変曲点
  • 変曲点を終点として自動検出する設定にします

❻ 測定時の pH に関する注意点

通常は pH を厳密に管理する必要はありませんが、以下の場合は注意が必要です。

  • カルボン酸型の陰イオン性界面活性剤
     酸性条件では完全に解離しない場合があります。

この場合:

  • 試料溶液の pH を 約10 に調整する
  • 界面活性剤電極の使用可能 pH 範囲を仕様書で確認する

❼ トラブル対策:測定方法の工夫

界面活性剤同士の反応には相性があります。
反応速度が遅い場合など、以下のような問題が起こることがあります。

  • 測定値がばらつく
  • 滴定曲線に明瞭な変曲点が現れない

対策

  • ❹を参照し、滴定液の種類変更を検討
  • 逆滴定を行う

逆滴定の例(陽イオン性界面活性剤の測定)

  1. 試料をビーカーに採取
  2. ラウリル硫酸ナトリウム溶液を一定過剰量添加
  3. 沈殿生成を確認し、約5分撹拌(反応を完結させる)
  4. 残余のラウリル硫酸ナトリウムを
     塩化ベンゼトニウム標準溶液で滴定(A mL)
  5. 空試験を実施(B mL)
  6. B − A(mL) が試料中の陽イオン性界面活性剤量に対応

❽ 陽イオン性界面活性剤を測定する別法(沈殿滴定)

陽イオン性界面活性剤は第四級アンモニウム塩であり、
水中で完全に電離して**ハロゲン化物イオン(Cl⁻、Br⁻、I⁻)**を放出します。

このハロゲン化物イオンを 硝酸銀標準溶液で沈殿滴定する方法もあります。

適用条件

  • 陽イオン性界面活性剤以外に
     ハロゲン化物イオンを含まない試料であること

まとめ

電位差滴定は、界面活性剤の定量において安全性・再現性に優れた方法です。
測定対象に応じた滴定液の選定、電極の種類、装置設定が測定精度を大きく左右します。
変曲点が得られない場合は、滴定条件や逆滴定の適用を検討することで、安定した測定が可能になります。


関連記事

Xからの読者コメントをお待ちしています。
ブログ更新の励みになります!
記事URLをコピーしました