力価測定のポイント【カールフィッシャー法】
はじめに
カールフィッシャー法(容量法)では、滴定試薬の力価が測定の正確さを左右します。
力価測定には標準物質として純水を用いることも可能ですが、投入量が極めて微量となるため、実際の操作では取り扱いが難しい場合があります。
そのため、水分濃度が既知の水標準物質を用いた力価測定が、精度・操作性の面から広く採用されています。
本記事では、水標準物質を用いた力価測定について、操作上のポイントと注意点を中心に解説します。
水標準物質について
水標準物質は、水分濃度が正確に規定されたアンプル入り試薬です。
純水とは異なり、秤量精度や投入量によるばらつきを抑えやすく、安定した力価測定が可能です。
アンプル容器には、主に以下の2種類があります。
- ポイントマーク入り容器
- ライン入り容器
アンプルの開封方法
アンプル頭部に試薬が入っている場合は、軽く指で叩く、またはゆっくり転倒させ、薬液を胴部へ落とします。
ポイントマーク入りアンプル
- ポイントマークと反対方向に頭部を押すようにして折ります。
ライン入りアンプル
- 頸部に一周カット線が入っているため、どの方向からでも折ることが可能です。
⚠️ 注意
カットした断面は鋭利になるため、手指を傷つけないよう十分注意してください。
シリンジによる採取
アンプル開封後、水標準物質をシリンジで採取します。
- 気密性の高いガスタイトシリンジが理想
- 樹脂製ディスポシリンジも使用可能
操作上の重要ポイント
- 小分けにせず、全量を一度で採取する
→ 開放状態で放置すると、吸湿・揮発により水分濃度が変化するため - 針先を上に向けてピストンを押し、気泡を除去
- 吸湿・揮発を抑えるため、針先にシリコンゴムなどを装着する
シリンジ質量の測定(投入前)
水標準物質を採取したシリンジの質量を電子天秤で測定します。
この値は、後で投入量を算出するために使用します。
水標準物質の投入
フラスコの側栓を外し、水標準物質を投入します。
- フラスコ内に外気が侵入するため、迅速かつ慎重に操作
- 脱水溶剤が飛び散らない速度で、液面に確実に注入
- 針先に液滴が残った場合は、液面に接触させて投入
シリンジ質量の測定(投入後)
投入後、再度シリンジの質量を測定します。
このときも、針先にはシリコンゴムを装着した状態で測定してください。
投入前後のシリンジ質量の差が、実際に投入した水標準物質の量となります。
力価の算出と評価
上記手順により、力価測定を複数回実施します。
- 一般的には3回測定
- その平均値を力価として採用
評価の目安
- 相対標準偏差(RSD):1%未満
ばらつきが大きい場合は、滴定液の濃度が不均一になっている可能性があります。
滴定液の容器を閉じ、おだやかに振り混ぜて均一にしてください。
まとめ
水標準物質を用いた力価測定では、
- 吸湿・揮発を防ぐ操作
- 全量一括採取
- 投入前後の正確な質量測定
といった基本的な操作が、力価の信頼性を大きく左右します。
力価の信頼性は、カールフィッシャー法による水分測定そのものの信頼性につながります。
日常分析の品質維持のためにも、ぜひ手順を見直してみてください。