ポリオールの水酸基価測定|アセチル化法の原理・手順・注意点をJIS K 1557をもとに解説
水酸基価とは
ポリオールとは、分子内に複数の水酸基(-OH)を持つ化合物の総称であり、ポリウレタンの原料として広く利用されています。ポリウレタンの合成は、ポリオールとイソシアネートが反応し、ウレタン結合(-NH-COO-)を形成することによります。
R-NCO + R'-OH → R-NH-COO-R'
水酸基とイソシアネート基は1:1のモル比で反応します。この比率はポリウレタンの強度・耐熱性などの性能を左右するため、水酸基の割合を正確に測定・管理する必要があります。
この目的で用いられるのが水酸基価です。水酸基価は、試料1 g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)で表されます。測定方法はJIS K 1557に規定されています。
測定原理(JIS K 1557 A法)
試料の構造・性質によって測定方法は異なりますが、本記事ではJIS K 1557に規定されるA法(アセチル化法)を紹介します。測定は以下の3段階で行います。
① 水酸基のアセチル化
無水酢酸のピリジン溶液を試料に加え、イミダゾールを触媒としてピリジン還流下で水酸基をアセチル化します。
R-OH + (CH3CO)2O → R-O-COCH3 + CH3COOH
イミダゾールはアセチル化反応の触媒として機能し、反応を促進します。
② 過剰の無水酢酸を加水分解
反応完結後、水を加えて過剰の無水酢酸を酢酸にします。
(CH3CO)2O + H2O → 2CH3COOH
③ 生成した酢酸を水酸化ナトリウムで滴定
生成した酢酸を0.5 mol/L 水酸化ナトリウム標準溶液で滴定します。
CH3COOH + NaOH → CH3COONa + H2O
空試験(ブランク)と試料測定の滴定量の差から、水酸基価を以下の式で算出します。
水酸基価 = (V1 - V2) × f × 28.05 / m
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| V1 | 空試験の滴定量(mL) |
| V2 | 試料測定の滴定量(mL) |
| f | 0.5 mol/L 水酸化ナトリウム標準溶液のファクター |
| 28.05 | 滴定液 1 mL に相当する水酸化カリウムの質量(mg/mL) |
| m | 試料の質量(g) |
使用電極
本測定は水溶液中での滴定であるため、水溶液用の電極で問題ありません。
| 電極 | 種類 |
|---|---|
| 指示電極 | ガラス電極 |
| 比較電極 | 銀-塩化銀電極 |
測定手順
- 三角フラスコに試料を採取し、質量を測定します。
- アセチル化試薬 25 mL を加え、試料を溶解します。
※アセチル化試薬:無水酢酸 127 mL を乾燥ピリジン 1000 mL に加え、イミダゾール 16 g を溶解したもの。 - 三角フラスコに冷却器を取り付け、接合部をピリジン 1〜2 滴で密閉します。
- ホットプレート上で 30 分間還流します。
- フラスコを冷却し、冷却器を水 25 mL で洗い流します。
- 冷却器を取り外し、接合部を水ですすいで同じフラスコに入れます。
- 溶液の全量を滴定用ビーカーに移し、0.5 mol/L 水酸化ナトリウム標準溶液で滴定します。
測定のポイント
還流時間の検討
ポリオールの種類によっては、30 分間の還流では反応が完結しない場合があります。測定値が一定最大を示す還流時間を事前に確認しておく必要があります。還流時間が不足すると、アセチル化が不完全となり測定値が低くなります。
不溶物の析出への対応
無水酢酸の加水分解のために水を加えた際、試料が析出する場合があります。不溶物内部に酢酸や無水酢酸が包含されると滴定されずに残存し、測定値にマイナスの誤差が生じます。この場合、ホモジナイザーなどを用いて不溶物を微細化し、酸を反応相へ移動させることが有効です。
試料が酸性・塩基性成分を含む場合
酸性・塩基性成分が共存すると水酸基価の測定値に影響するため、補正が必要です。0.1 mol/L 塩酸または水酸化ナトリウムで別途滴定し、「試料 1 g 中の水酸化カリウムのミリグラム数」として補正値を求めます。
補正後の水酸基価 = 水酸基価 + 酸価(酸性成分を含む場合) 補正後の水酸基価 = 水酸基価 - 塩基価(塩基性成分を含む場合)
滴定量が多い場合の設定
空試験の滴定量は約 130 mL と多くなります。酢酸の揮発による誤差を防ぎ、測定時間を短縮するため、終点付近まで一定速度で滴定液を注入する設定を推奨します。また、被検液があふれないよう、十分なサイズのビーカーを使用してください。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 測定対象 | ポリオールの水酸基価(mgKOH/g) |
| 測定原理 | アセチル化法(無水酢酸と反応 → 過剰分を加水分解 → NaOHで逆滴定) |
| 滴定液 | 0.5 mol/L 水酸化ナトリウム標準溶液 |
| 指示電極 | ガラス電極 |
| 比較電極 | 銀-塩化銀電極 |
| 主な注意点 | 還流時間の確認、不溶物の微細化、酸・塩基補正、滴定量が多い点 |
| 採用規格 | JIS K 1557 |