化学分析の実践ノウハウ

酢酸を溶媒とする非水滴定で誤差・ばらつきが出る原因と対策【電位差滴定】

yusuke

酢酸を溶媒とする非水滴定は、主に医薬品の定量で広く用いられています。
ですが、測定値が高めに出たり、ばらつきが生じたりした経験はないでしょうか?
本記事では、誤差・ばらつきの具体的な原因と、現場で実践できる対策を解説します。


誤差・ばらつきの主な原因

主に次のような原因が考えられます。

  1. 被検液への水の混入
  2. 測定条件(滴定装置の設定)が不適切
  3. 電極の性能の低下
  4. 液絡の詰まり
  5. 滴定液のファクターが正しくない

それぞれ詳しく見ていきます。


❶ 被検液への水の混入

■ なぜ水が問題になるのか

この滴定では、被検液に水が混入すると終点付近での電位変化が小さくなります。

その結果、

電位変化が小さくなる
→ 滴定曲線がなだらかになる
→ 本来より後ろで終点が検出される
→ 測定値が高めに出る(プラスの誤差)

という問題が起こります。

■ よくある水の混入の原因

特に多いのが、比較電極の内部液に
塩化カリウム水溶液を使用しているケースです。

内部液は比較電極の液絡を通じ、被検液へと流出します。
そのため、塩化カリウム水溶液を使用している場合、被検液に水が入り込んでしまうのです。

■ 対策

内部液として以下のいずれかを使用します。

  • 1 mol/L 塩化リチウム酢酸溶液
  • 過塩素酸を酢酸に飽和した溶液

これらは、電位差滴定装置や試薬会社などから購入することができます。
もちろん、自身で調製することもできます。

⚠️ 注意
酢酸を使用しない非水滴定では、上記の内部液は使用しません。


❷ 測定条件(滴定装置の設定)が不適切

非水滴定は、水溶液系に比べて反応速度が遅いという特徴があります。

そのため、

滴定反応の進行

滴定液の注入スピード

のバランスが非常に重要です。

■ 滴定スピードが速すぎる場合

  • 反応が追いつかない
  • 終点付近で過剰滴定
  • 測定値が高めに出る

という問題が起こります。

■ 対策

  • 滴定スピードをやや遅めに設定する
  • 非水滴定で推奨されている設定を確認する

一般的な滴定装置では、ΔmV/ΔmLの大小などによって、注入の仕方や注入スピードが自動で変化するようになっています。

メーカー推奨の設定を確認することも重要です。


❸ 電極の性能の低下

非水滴定を連続して行うと、

  • 電極の応答速度低下
  • 感度低下

が一時的に起こることがあります。

これは、過剰滴定(プラス誤差)の原因になります。

■ 性能復帰操作

対策として、一時的に低下した性能を復帰させる操作が有効です。
試料測定後、毎回以下を行います。

  1. 電極を純水に浸漬する
  2. 電位が安定するまで待つ
  3. 付着した水を十分に拭き取る
  4. 次の測定へ進む

⚠️ 注意
水の混入はプラスの誤差を生じます。拭き取りは確実に行ってください。


❹ 液絡の詰まり

中和反応により生成する塩は、酢酸に溶けにくい場合が多いです。

そのため、滴定が進むと溶液が濁ることがありますが、
濁ること自体は問題ではありません。

しかし、

  • 細かい粒子が液絡に詰まる
  • 滴定中の電位が不安定になる
  • 測定値がばらつく

というトラブルが起こることがあります。

■ 対策

複合電極ではなく、

単極ガラス電極

ダブルジャンクション型 比較電極

の組み合わせが有効な場合があります。

液絡の面積が大きくなるため、詰まりにくくなるからです。


❺ 滴定液のファクターが正しくない

滴定液のファクターが変動している場合、測定値に誤差を生じます。

これが疑われる場合は、滴定液の標定を行い、最新のファクターに更新してください。

なお、滴定液の標定については、
「0.1mol/L 過塩素酸酢酸溶液の標定のポイント」 で詳しく解説しています。

まとめ

酢酸を溶媒とする非水滴定で誤差やばらつきが生じる主な原因は、

  • 被検液への水の混入
  • 測定条件(滴定装置の設定)が不適切
  • 電極の性能の低下
  • 液絡の詰まり
  • 滴定液のファクターが正しくない

です。

特に、内部液に由来する水の混入が原因であるケースが多いです。

測定条件や電極の取り扱いを見直すことで、
測定の精確さが大きく改善する可能性があります。

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