酢酸を溶媒とする非水滴定で誤差・ばらつきが出る原因と対策【電位差滴定】
酢酸を溶媒とする非水滴定は、主に医薬品の定量で広く用いられています。
ですが、測定値が高めに出たり、ばらつきが生じたりした経験はないでしょうか?
本記事では、誤差・ばらつきの具体的な原因と、現場で実践できる対策を解説します。
誤差・ばらつきの主な原因
主に次のような原因が考えられます。
- 被検液への水の混入
- 測定条件(滴定装置の設定)が不適切
- 電極の性能の低下
- 液絡の詰まり
- 滴定液のファクターが正しくない
それぞれ詳しく見ていきます。
❶ 被検液への水の混入
■ なぜ水が問題になるのか
この滴定では、被検液に水が混入すると終点付近での電位変化が小さくなります。
その結果、
電位変化が小さくなる
→ 滴定曲線がなだらかになる
→ 本来より後ろで終点が検出される
→ 測定値が高めに出る(プラスの誤差)
という問題が起こります。
■ よくある水の混入の原因
特に多いのが、比較電極の内部液に
塩化カリウム水溶液を使用しているケースです。
内部液は比較電極の液絡を通じ、被検液へと流出します。
そのため、塩化カリウム水溶液を使用している場合、被検液に水が入り込んでしまうのです。
■ 対策
内部液として以下のいずれかを使用します。
- 1 mol/L 塩化リチウム酢酸溶液
- 過塩素酸を酢酸に飽和した溶液
これらは、電位差滴定装置や試薬会社などから購入することができます。
もちろん、自身で調製することもできます。
⚠️ 注意
酢酸を使用しない非水滴定では、上記の内部液は使用しません。
❷ 測定条件(滴定装置の設定)が不適切
非水滴定は、水溶液系に比べて反応速度が遅いという特徴があります。
そのため、
滴定反応の進行
と
滴定液の注入スピード
のバランスが非常に重要です。
■ 滴定スピードが速すぎる場合
- 反応が追いつかない
- 終点付近で過剰滴定
- 測定値が高めに出る
という問題が起こります。
■ 対策
- 滴定スピードをやや遅めに設定する
- 非水滴定で推奨されている設定を確認する
一般的な滴定装置では、ΔmV/ΔmLの大小などによって、注入の仕方や注入スピードが自動で変化するようになっています。
メーカー推奨の設定を確認することも重要です。
❸ 電極の性能の低下
非水滴定を連続して行うと、
- 電極の応答速度低下
- 感度低下
が一時的に起こることがあります。
これは、過剰滴定(プラス誤差)の原因になります。
■ 性能復帰操作
対策として、一時的に低下した性能を復帰させる操作が有効です。
試料測定後、毎回以下を行います。
- 電極を純水に浸漬する
- 電位が安定するまで待つ
- 付着した水を十分に拭き取る
- 次の測定へ進む
⚠️ 注意
水の混入はプラスの誤差を生じます。拭き取りは確実に行ってください。
❹ 液絡の詰まり
中和反応により生成する塩は、酢酸に溶けにくい場合が多いです。
そのため、滴定が進むと溶液が濁ることがありますが、
濁ること自体は問題ではありません。
しかし、
- 細かい粒子が液絡に詰まる
- 滴定中の電位が不安定になる
- 測定値がばらつく
というトラブルが起こることがあります。
■ 対策
複合電極ではなく、
単極ガラス電極
+
ダブルジャンクション型 比較電極
の組み合わせが有効な場合があります。
液絡の面積が大きくなるため、詰まりにくくなるからです。
❺ 滴定液のファクターが正しくない
滴定液のファクターが変動している場合、測定値に誤差を生じます。
これが疑われる場合は、滴定液の標定を行い、最新のファクターに更新してください。
なお、滴定液の標定については、
「0.1mol/L 過塩素酸酢酸溶液の標定のポイント」 で詳しく解説しています。
まとめ
酢酸を溶媒とする非水滴定で誤差やばらつきが生じる主な原因は、
- 被検液への水の混入
- 測定条件(滴定装置の設定)が不適切
- 電極の性能の低下
- 液絡の詰まり
- 滴定液のファクターが正しくない
です。
特に、内部液に由来する水の混入が原因であるケースが多いです。
測定条件や電極の取り扱いを見直すことで、
測定の精確さが大きく改善する可能性があります。