電位差滴定では、比較電極(参照電極)の状態が測定の安定性に大きく影響します。
本記事では、比較電極の種類と特徴、正しい保管・洗浄方法、よくあるトラブルとその対策について解説します。
1. 比較電極(参照電極)の種類
液絡の数による分類
■ シングルジャンクション
- 内部液:3.3 mol/L 塩化カリウム水溶液のみ
- 使用用途:水溶液系の滴定のみ
■ ダブルジャンクション
液絡の材質・構造による分類
■ 多孔質セラミック
- 汚れや析出物が少ない測定に使用
- 液絡の詰まりが起こらない条件で使用
■ スリーブ(すり合わせガラス)
2. 比較電極の保管方法
■ 短期保管(1週間以内)
- 内部液補充口:閉じる
- 保管方法:純水に浸漬
- 内部液:交換不要
■ 長期保管(1週間以上)
- 内部液補充口:閉じる
- 保管方法:3.3 mol/L 塩化カリウム水溶液に浸漬
- 内部液:3.3 mol/L 塩化カリウム水溶液に入れ換え
3. 内部液の交換方法
内部液の排出と洗浄
- 補充口を開放し、電極を倒立
- スポイトで内部液を吸引・排出
- 純水を全量の約1/3まで注入
- 電極を上下反転させ内部を洗浄
- 吸引・排出
- 上記操作を3回程度繰り返す
次の測定に使用する内部液での共洗い
- 新しい内部液を全量の約1/3注入
- 上下反転して洗浄
- 吸引・排出
- 上記操作を3回程度繰り返す
- 最後に内部液を補充口付近まで入れる
液絡への内部液浸透
- 純水に浸漬し、補充口を開放
- 30分程度放置
4. 洗浄方法
- 基本:純水ですすぐ
- 電位が不安定な場合は液絡の詰まりを疑う
■ 多孔質セラミック・固定スリーブ
- 汚れの種類に応じて洗浄液を選択
- 有機物汚れ:エタノール、アセトンなどですすぐか、浸漬洗浄
■ 可動スリーブ
- スリーブを慎重に持ち上げる
- すり合わせ部分の汚れをワイパーなどで除去
5. 内部液の交換頻度
- 明確な規定はない
- 目安:1週間程度
- 交換時は 継ぎ足しではなく全交換
特にダブルジャンクション型では、
- 内部液への塩化物イオンの混入(内筒の塩化カリウム溶液から)
- 内部液への水の混入(内筒の塩化カリウム溶液と吸湿によって)
といったリスクがあるため、定期的な全交換が望ましいです。
6. トラブル:内部液の減りが早い
特に可動スリーブ型で起こりやすいトラブルです。
原因
対処
- スリーブを持ち上げ、汚れ・傷を確認
- 汚れがあれば洗浄(❸参照)
- 傷があれば更新を検討
- 問題がなければ、やや強めに密着させて様子を見る
※ 強く密着しすぎると内部液が流出しない、破損の恐れあり
7. トラブル:内部液中に結晶がある
- 原因:塩化カリウムなどの析出
- 電位差滴定への影響:基本的に問題なし
- 滴定曲線は縦軸(mV)がシフトするだけ
- 終点までの滴定量は変わらない
※ 結晶が内部液の流出を妨げる場合は、内部液を全交換
まとめ
測定内容に応じて比較電極を選択し、正しい方法で保管・洗浄・内部液の管理を行うことで、適切な条件での測定が可能となります。