【JIS K 2501】 全酸価の測定解説|電位不安定や二酸化炭素への対策法
【JIS K 2501】 全酸価の測定解説|電位不安定や二酸化炭素への対策法
yusuke
石油製品や潤滑油の劣化指標として重要な「酸価」。JIS K 2501に基づく電位差滴定法は標準的な手法ですが、「電位が安定しない」「滴定曲線がガタガタになる」といったトラブルに悩まされていませんか?
本記事では、分析実務の視点から、試薬調製の注意点やASTM規格との違い、そして精度を安定させるための電極メンテナンスまで詳しく解説します。
1. 酸価(全酸価)とは
酸価とは、
「試料1g中の酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数」
と定義されます。
ポイントは:
- 特定の酸の濃度を表すものではない
- 「酸性物質の総量」を反映
- 品質管理・劣化指標として用いられる
2. 使用する試薬と調製のコツ
滴定溶剤
- トルエン(500mL)+ 水(5mL)+ 2-プロパノール(495mL)
滴定液(0.1mol/L 水酸化カリウム2-プロパノール溶液)
市販品も使用可能ですが、調製する場合は以下の点に注意してください。
- 使用量の計算: 市販のKOH(特級)は純度約85%で、残りは水和水です。100%として計算しないよう注意します。
- 炭酸塩の除去: KOH中の炭酸塩は2-プロパノールに溶けず、濁りが生じます。ろ過するか、細長い容器で3日間放置して上澄み液を使用します。
- 二酸化炭素対策: 滴定液が空気中のCO2を吸収すると濃度が変わります。保存容器には必ずソーダ石灰管を装着しましょう。
3. 電極の選択と注意点
酸価の測定では、以下の電極を使用します。
指示電極:ガラス電極
比較電極:比較電極(スリーブ型)
💡 複合電極(1本タイプ)よりも、指示電極と比較電極を分離した2本使いの方が、非水滴定では電位が安定しやすい傾向にあります。
JISとASTMの「内部液」の違い
JIS K 2501は国際規格のASTM D 664と対応していますが、比較電極の内部液の規定が異なります。
- JIS K 2501: 3.3mol/L KCl水溶液
- ASTM D 664: LiCl(塩化リチウム)エタノール溶液
4. 測定手順と終点の判断
- 試料をビーカーに採取し、質量を測定します。
- 滴定溶剤125mLを加え、試料を溶解します。
- 0.1mol/L KOH溶液で滴定します。
- 同条件で空試験(ブランク)を実施し、試料測定時の滴定量を補正します。
終点の決定
- 変曲点がある場合: 滴定曲線の変曲点を終点とします。
- 変曲点がない(不明確な)場合: あらかじめ調製した**「非水塩基性緩衝液」**が示す電位に達した点を終点とみなします。
5. 精度を上げるための「現場のポイント」
① 電位が不安定・曲線がガタつく場合
原因の多くは電極の汚れや一時的な応答性の低下です。
- 対策: 測定ごとに滴定溶剤で電極を洗浄した後、電位が安定するまで純水に浸漬させます。次の測定前には水を拭き取ってください。
② 二酸化炭素(CO2)の影響を防ぐ
空気中のCO2の吸収は、測定値のばらつき、プラス誤差の原因となります。
- 対策1: 撹拌スピードを「空気を巻き込まない程度」に下げる。
- 対策2: ビーカー上部から窒素ガスをパージ(吹き付け)しながら測定する。
③ 複数の変曲点に注意
複数種類の酸が含まれる場合、変曲点が複数現れることがあります。非水塩基性緩衝液の電位を超えるまで滴定を継続し、滴定曲線の全容を把握することが大切です。
まとめ
JIS K 2501の酸価測定は、装置の精度だけでなく、試薬の管理と電極のメンテナンスが精度を左右します。
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